お知らせ 2019年10月1日からこのブログ
「あなたの幸せ力を引き出すストーリーセラピー【ストセラ】」は
https://storytherapy.net/
へ移行します。

こちらのseesaa版は、これまでの記事のアーカイブとして残します。
今後とも、よろしくお願いいたします。

2015年10月30日

小説「サウダージ ヒートアイランドV 垣根涼介 著 文春文庫」人が人であることを確認する瞬間




わたしの妻は「人は信用できない」と言っておきながら
人に裏切られることにいつも怯えているタイプです。
つまりは、信用したい!と常に思っている。

わたしは「信用できる人もいる」と言っておきながら、
裏切られるようなこともあるさ、そのときはそのとき、
と割り切っているタイプです。
つまり、見る人から見ると、
本当に人に心を許すことが少ないタイプ。

…なんだそうです。

わたしも妻にも、なんとな〜く(笑)
思い当たるフシはあります。

結局どちらも人を信じたいけどそこに怖さも感じている。
そのあんばいの微妙な違いがあるだけのこと。

わたしは基本的に人の言動を善意で受け取ろうとする。
妻は、誰の行為もまずは疑ってみるようです。

はっきりいってわたしは警戒心が強い…らしい…
だから自分でも意識して善意で受け取ろうとしているのかも。

それでも、この人は危ないなと思う人は
沢山います。もう、正直たっくさん!!います。
(笑)

世界中を見渡せば、日本の常識なんて通じない。
宗教の違いで殺し合いをするような国の人と、
平和な日本に育った人の違いだけ見ても、
人が信じられないというより、
自分の価値観での信じる信じないの判断自体が
危ういと思っています。

それでも、もっと大きな意味では
みんな人間だから…という地球規模の
大きな信頼は必要なのかな?
やっぱり…



小説を読みたいのかな…
しばらく福井晴敏さんの作品に触れてから、
ビジネス書に戻ってみましたが、どうも心が動かない。
夏以降、ずっとそんな調子です。
かと言って書店に行っても何かピンとこない。
ふと、自宅の本棚から抜き取った数年間に読んだ作品が
読み進めるとビンビン響いてきました。

小説「サウダージ ヒートアイランドV」
垣根涼介 著 文春文庫


を、一気に読破しました。

故郷を捨て、過去を消し、
現金強奪などの悪事を働いて生きている
日系ブラジル人の高木耕一。

彼は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出逢います。

気分屋でアタマが悪く、金には汚い女。

しかし耕一はどうしようもなくDDに惹かれ、
引きずられていきます。

一方、かつて『雅』というストリートギャング集団の
ヘッドをしていたアキ。

裏金強奪のプロフェッショナルである
柿沢と桃井に見込まれて仲間になり、
一通りのOJTも終えましたが、
まだまだ新米。

身体を作るためにと桃井に誘われた水泳。
そのプールでフリーのデザイナー、和子と出会います。

しかし、アキの仕事は柿沢、桃井以外には
本当の意味では気を許せない仕事。

そして、DDのために大金を獲て、
コロンビアへ高飛びしようと企てた耕一は、
かつて自分を仲間に引き入れておきながら、
「お前には大事なモノが欠けている」と言って自分を捨てた
柿沢に接触するのでした。



「午前三時のルースター」(文春文庫)
でサントリーミステリー大賞を受賞してデビューした
垣根涼介さんのヒットシリーズ…

「ヒートアイランド」シリーズの第3弾です。

渋谷のストリートギャングが
不注意で裏金強奪のプロフェッショナルチームから
3千万円を奪ってしまうかたちになり、
元々その金はヤクザのものだったため、
ストリートギャング、裏金強奪のプロチーム
敵対する二つのヤクザの組織…
の四つどもえの強奪線が繰り広げられた第1作。
「ヒートアイランド」
主人公アキはまだ十代の若者でした。

そして、裏金強奪のプロに見込まれたアキ。
第2作目「ギャングスター・レッスン ヒートアイランドU」
では、そのアキが“先輩”である柿沢と桃井に
裏金強奪のプロとしての訓練を受けていきます。

練りに練った四つどもえの争奪戦が
軽快かつサスペンスフルに進んでいく第一作目に対し、
肩の力が抜けきった第二作目で、
読者はアキの“かわいらしさ”に惹きつけられます。

そしてこの第三弾「サウダージ」

「ギャングスター・レッスン」に比べると
かなり丁寧に書き込まれていると感じる作品。
でも、「ヒートアイランド」ともまた違う味がある作品です。

なぜなら、二人の主人公の恋愛模様が
ドラマの軸に据えられているから。

この作品だけのもう一人の主人公、高木耕一は、
とんでもない奴です。

人を殺した経験もあり、暴力をふるえる機会があれば、
喜びを感じてしまうような、
とてもねじれた人間性をもつ耕一。

柿沢・桃井・アキは暴力団や汚職政治家などの
決して表には出ない裏金を専門で狙うプロ。
表のカネには手を付けない…つまり銀行強盗や
どこかの商社の売上金を強奪したりなどは絶対にしません。

しかし、過去に柿沢たちの訓練を受け、
実践を踏む前に三下り半を突き付けられて
チームを追い出された耕一は、
以降、一人で表のカネを奪って生きていました。

読んでいても気持ちが悪くなるほどの
悪行と暴力。

ですが、読んでいると次第に耕一に共感しはじめ
突如、涙を誘われる場面がおとずれます。
涙を誘われるのは涙もろいわたしだけかもしれませんが(笑)

耕一も人間なんだと思える場面が描かれる。
人間味…それもとても根源的で純粋な
温かみのある人間味が描かれる場面です。

ずっと、誰も信じずに、世の中を憎んで生きてきた耕一。
心許せる友など持ったこともない耕一が、
明け透けなまでに自分を受け入れてくれるDDに
涙してしまうシーン。

わたしはいつも垣根さんの小説には
“乾いた熱風”みたいなものを感じます。

それはこの作品も同じ。
その理由はこの作品の中でも文章として書かれています。
「興味が自分の内面に向く…」
「自分を突き放してみている…」

つまりは自分を客観的にみるということだと思いますが、
そういうことができるかできないか?
という視点は作品全体を通して貫かれているんですね。
それが良いか悪いかではなくて、
ただできるかできないか。

そして、そういうことができるキャラクターも
できないキャラクターも全て人間味が醸し出される。

それなのに、湿った人情モノとは違う。

特に今回の作品は、キャラクターたちの
心情がとても丁寧に描かれているように感じました。

物語の軸となる耕一とDDの人生。
耕一は故郷でも日本でも受け入れられた経験がない。
でも、やっと自分を受け入れてくれる人に出会えて
その歪んだ精神に一筋の光が照らされる。

人が受け入れられるということが
どれだけ大きなことなのか?

わたしはおかげさまで受け入れられて当たり前と
思えるような家庭で育ちました。

でも、外の世界に出ると、
そういうわたしを“幸せ家庭”で育った人
として扱い、多くの人はそうじゃないんだと
訴えてくる人とも沢山出会ってきました。

そういう人たちは、
自分なりに強く生きてきたという自負を持ちつつも
どこかで世の中を斜めに見ている。

そして、渇望するように、人から受け入れられることを
無意識で願っていることも思い知らされました。

人の心を開かせるには、まず自分の心を開く…
簡単なことはないけど、
この物語のなかのDDの強烈な承認は、
どん底の人間、耕一の心でさえ開かせた。

エロやバイオレンスの描写はえげつないですが、
人の心に対する希望というか
人を信用はしないけど、根本的には信じている。
そんなものを自分の中に確かめられる小説です。



                  全ての物語のために




























ラベル:小説 ヒートアイランドV 垣根涼介 文春文庫 人が人であることを確認する瞬間 人は信用できない 信用したい!と常に思っている 人に裏切られることにいつも怯えている 信用できる人もいる 裏切られるようなこともあるさ 割り切っているタイプ 本当に人に心を許すことが少ない 人を信じたいけどそこに怖さも感じている まずは疑ってみる 基本的に人の言動を善意で受け取ろうと 警戒心が強い 日本の常識なんて通じない 宗教の違いで殺し合いをするような国の人 平和な日本に育った人 信じる信じないの判断自体が 危うい 大きな意味で 地球規模の 大きな信頼 福井晴敏 ビジネス書 高木耕一 日系ブラジル人 コロンビア人 DD ストリートギャング アキ 裏金強奪のプロフェッショナル 柿沢 桃井 午前三時のルースター ヒートアイランド 第3弾 ギャングスター・レッスン ヒートアイランドU 第三弾 恋愛模様 とてもねじれた人間性 も人間なんだと思える場面 とても根源的で純粋な 温かみのある人間味が描かれる場面 誰も信じずに、世の中を憎んで生きてきた 自分を受け入れてくれる 乾いた熱風 興味が自分の内面に向く 自分を突き放してみている 湿った人情モノとは違う 歪んだ精神に一筋の光が照らされる 人が受け入れられるということが どれだけ大きなことなのか? 受け入れられて当たり前 強く生きてきたという自負 エロやバイオレンスの描写はえげつない 人を信用はしないけど、根本的には信じている 自分の中に確かめられる小説 サウダージ
posted by ストーリーセラピスト at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリーセラピー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック